2013年6月13日木曜日

歓迎すべきインピーダンス不整合

2006年に同軸構造体中の誘電体の不均一さによる電波の反射を計測することによって、位置と状態を推定する。というテーマが現在の会社の名前の由来のひとつになっています。

この時の結果は IRS2006 の "Void Detection in Grout-Filled Sheath Tube by RF Propagation"にまとまりました。

DD-125 さわゆき
そして、更に遡れば学生の頃に、「時間的に変化する回路系の状態を測定するにはどうすればよいか?」という教授の一言にまで戻ります。多分、その一言はさり気なく私の琴線に触れたのでしょう。

通常、インピーダンス不整合は無線屋さんにとっては歓迎されませんが、レーダに代表されるような反射を捉えるシステムでは逆に大歓迎で、不整合点から反射があるので目標を捉えられる訳です。




  送信機 ---> (マッチング) ---> 空中線 ---> (マッチング) ---> 空間 --->

    ---> 目標 (ミスマッチ) ---> 空間 ---> (マッチング) ---> 空中線 --->

    ---> (マッチング) ---> 受信機

こういう視点でステルスや電磁波シールドを考えると理解しやすいかも知れません。

写真の”さわゆき”は就役して直ぐの頃に乗艦した思い出の艦。CQ出版、RFワールド誌の記事執筆のため横須賀を訪れた際に偶然にも再会を果たしました。この艦も各種レーダを搭載している様子が分かりますね。

自分にとっては最も感動したシーン(正面から)


2013年6月11日火曜日

NHK放送博物館 --- 愛宕山

同軸開放型
所用の為に虎ノ門方面へ出かけたついでにNHK放送博物館に寄り道。

どこに行っても空中線の香りを敏感に嗅ぎとるもので、入り口横にひっそりと展示されている空中線群があります。ひっそりと展示というより、まるで隠してあるような、ちょっと置いただけというような感じで目立ちません。

しかし、東京タワーからテレビ電波が停波し、それを背に日本初のテレビ放送用アンテナが展示されているアングルは感慨深いものがあります。


そして、その横にはアナログ放送最後のスーパーターンスタイルアンテナが展示してあります。これは東京タワーの最上部に取り付けてあったものだそうです。

スーパーターンスタイルアンテナ
無線従事者試験の勉強には欠かせない形式の空中線でしたが、VHF-Low帯の波長が成せるサイズとでも表現したらよいのでしょうか、美しいフォルムです。

2013年6月8日土曜日

富永敬俊博士 --- きいろ香


Academic Pressから出版されているWine Scienceという本にも、多く引用されている故富永博士が発見したソーヴィニヨン・ブランの香りの構造。そして、2003年に日本の固有品種の葡萄”甲州”にも同じ香りが発見された。それから10年目の今年、その甲州から造られた特別なワインがリリースされました。
甲州きいろ香
en Hommage à Taka 2012


写真のボトルの裏には、次のように記されています。

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ワインの研究生活を小鳥たちと過ごす時間は「聴こえない唄声」の探訪でもあるのです。

・・・

小鳥(きいろ)はボクにこう教えてくれた。。。
「耳を澄ませばいままでとは別の音が聴こえる。」
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博士と小鳥の物語は有名ですが、このワインは甲州という日本が誇るべき葡萄品種とメルシャンの熱意を軸に、博士と小鳥が織りなす「物語」で彩られたスペシャルキュヴェです。



2013年6月3日月曜日

誤り訂正符号のゴール

私達はセミナーをやらせていただく際に、この技術を理解するとこんなメリットがありますと最初に提示させて頂くように心がけています。マラソンや登山を考えると分かりやすいのですが、ゴールが見えないと普通は頑張れませんから。


以前、ある会社様のご依頼で誤り訂正符号の勉強会をやらせて頂きました。
その時の誤り訂正符号の勉強会では、誤り訂正符号のゴールは符号化利得にあると強引に定義しました。それはその会社様のニーズが明確になっていた為です。

電波法で微弱無線や特定小電力無線においては小さな送信電力しか認められていません。
その制約の中で如何に遠距離まで通信できるようにするかという方法を考えると、・許容限界までパワーを上げる。・受信性能を上げる等など。しかし、電界強度規定や送信アンテナ利得制限がありますから些細な向上でしかありません。受信アンテナに巨大パラボラアンテナを使える方は別ですが。。。

現状あるもので何とか到達距離を伸ばしたいという場合は、誤り訂正符号を導入するとどうでしょう。伝送効率は低下しますが、それを許容できる通信であれば、符号化利得が得られますからその効果は大きいものとなります。この勉強会をやらせて頂く前は誤り訂正符号は文字通りに通信のエラーフリー化と思っていました。今にして思うと、回線設計をやって空中線利得や送信電力を決める。これができる世界は贅沢です。

その勉強会のお陰で、微弱無線で何とか通信をしたいと考えておられる方々には誤り訂正符号は遠距離化の為の有効な手段だとこちらが逆に勉強をさせて頂きました。

弊社のWebにその時のサンプル資料(抜粋版)を置いています。ご興味がある方はご覧ください。

2013年6月2日日曜日

CPC 複合放物面集光

光を扱うとNonimaging opticsで扱えるものとImaging opticsで扱わなければならないものとがあります。前者は集光光学系、後者は結像光学系と言えるでしょう。

私達の開発の多くは前者のNonimaging opticsで、如何に効率よく集光するかが重要となリます。
ここ数年、複合放物面集光(CPC)と呼ばれる便利な集光光学系が安価に入手できるようになり重宝しています。

写真では左側のファイバー端から放射された光が、エアギャップを通過し、右側のCPCに入射しています。下側の写真ではCPCの集光端(右側)に集められている様子がわかります。

CPCの強みは、ある程度の放射角をもった光でも集光できることで、特に拡散光の集光には有効です。

私達はこのような光学部品の選定を含めた装置化をおこなっています。

2013年6月1日土曜日

中波送信所 --- ニッポン放送、アール・エフ・ラジオ

電波の日という訳ではありませんが、中波放送の送信所位置を眺めていて、ふと疑問が・・・。
関東広域圏局であるTBSは埼玉県戸田市、文化放送は埼玉県川口市に送信所があります。もう一つのニッポン放送の送信所は千葉県木更津市にあります。木更津で関東広域圏を対象とするにはちょっと不思議な位置ですが、人口分布までを考えると益々、不思議な位置です。

アール・エフ・ラジオ送信所
そこで、調べをすすめていくとAMプリエン物語という書籍に行き当たりました。そこにはニッポン放送の送信所移転、増力(送信出力アップ)、周波数変更等の経緯が書かれており興味深い内容でした。

その中で、木更津送信所では指向性を持たせているとの記述があり、しかも導波型で。。。
早速、Googleマップで(35.39683,139.987535)を検索すると、主鉄塔の北側に副鉄塔らしきものが確認できます。その延長線方向は東京、埼玉方面のようです。これで木更津にあってもよいわけですね。

ダウンリード終端
そんな観点でみると不思議な送信所が更にあって、それがアール・エフ・ラジオ日本。神奈川県を放送対象にしている局ですが、 送信所は東京都と神奈川県の境界で多摩川河川敷、神奈川県川崎市幸区(35.548292,139.699632)にあります。今はどうか分かりませんが、ある意味で貴重な場所で、50KWもの送信出力を出しているにもかかわらず送信アンテナの直下まで行けてしまうというところ。その写真を見返してみると、確かに指向性をもたせる為のダウンリードが写っていました。

今ではインターネットでクリアなストリーミング放送を楽しむことができますが、 送信技術者の方々のご苦労に思いを馳せながら混信やフェージングというスパイスが効いた空間波を受けるのも一興かと思います。